弊社の活動については 弊社ウェブサイトのほかに、アカウント名"@nanahoshimgmt"にて X(旧Twitter)及び LINE でお知らせしています。
わかもと製薬(4512)の株主価値向上に向けて
Presented by
本ウェブサイトの運営会社は、株式会社ナナホシマネジメント(以下「弊社」といいます。)です。
弊社は、わかもと製薬株式会社(以下「当社」又は「わかもと製薬」といいます。)の株主です。
本ウェブサイトは、わかもと製薬の株主を対象としたキャンペーンサイトです。
2024年6月開催予定の当社定時株主総会における弊社の株主提案(概要)
PBR1倍以上を目指すために、株主資本コストと同水準であるDOE9%相当の配当を行うこと
柔軟な資本政策を推進するために、別途積立金を取り崩すこと
動物福祉への取組の透明化として、実験動物購入頭数を開示すること
気候変動リスク対応として、政策保有株式にかかる温室効果ガス排出量持分を開示すること
議決権行使の判断材料を充実させるために、有価証券報告書を株主総会前に開示すること
東証「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を株主総会前に開示すること
最近の対話状況
2024年4月15日、株主提案書を公表しました
内容:2024年6月開催予定の当社定時株主総会における株主提案
2024年3月6日、当社取締役会宛てに書簡を送付しました
内容:当社メインバンクかつ大株主であるみずほフィナンシャルグループ出身者の当社理事を取締役候補者としないことについての要望等
2024年1月29日、当社理事宛てに書簡を送付しました
内容:2023年11月16日及び2024年1月25日の面談フォローアップ等
本ウェブサイトのコンテンツ
修正PBR0.55倍の改善に向けて弊社が考える施策
ESGの改善を通じた資本コストの低減(リスク低減)
資本効率性の改善(資本コストを意識)
弊社が考えるわかもと製薬の課題等と解決策
(補足:本ウェブサイトにおいて、特に記載のない限り、株価及び時価総額は2024年4月11日を起点とした過去1年間の平均値221円及び77億円、財務データは2023年12月末現在。)
当社株価に対する異常に低い評価
資料1のとおり、当社の株価のバリュエーションは、修正PBRでみると、0.55倍に過ぎません(■÷■)。
なお、修正前のPBRを算定しても1倍を大きく下回っています(■÷■)。
資料1:修正PBRのイメージ図
修正PBR(株価÷修正一株当たり純資産)は、異常に低い水準となっている。
(補足:修正一株当たり純資産は、税引後賃貸等不動産含み益を自己資本に加算した金額を、自己株式を除く発行済株式総数にて除して算定。また、税引後賃貸等不動産含み益は、有価証券報告書注記に記載される(賃貸等不動産時価-賃貸等不動産貸借対照表計上金額)×(1-想定税率30%)にて算定。)
累計赤字70億円超に上る医薬事業
資料2のとおり、当社の医薬事業は報告セグメントとして区分されて以来14期連続で赤字が継続しています。そして、累計のセグメント損益の赤字幅は73億円に上ります。
資料3のとおり、眼科領域への特化に対しては、警笛が鳴らされていました。なお、故牧田鈆市氏は、わかもと製薬再建のために日本銀行を退行し、当社経営再建に尽力された方です。
しかし、医療用事業は眼科領域を中心として(2011年4月社長就任の神谷信行氏(ドラッグマガジン2011年6月号))、眼科領域の医療用医薬品への特化(2017年4月社長就任の堀尾良宏氏(ドラッグマガジン2017年8月号))といった経営方針が採用されてきたようです。
当社は、眼科領域への特化という経営方針に固執するのではなく、資本コストの観点から医薬事業の継続の要否を検討するべきです。そのため、弊社は当社に対し、以下の取組を期待します。
眼科領域への特化の是非を資本コストの観点から検討する
資本コストの観点から合理的な説明が難しいなら撤退する。そして、当社の強みである、『強力わかもと』ブランドの拡大等に更に注力する。
資料2:報告セグメントとして区分されて以来の医薬事業の累計セグメント損益
累計セグメント損失金額は時価総額77億円に匹敵する勢いで悪化している。
資料3:医薬事業の眼科領域への特化に対する忠告
今から20年以上前に、当社経営再建時の社長が医薬事業に対して既に警笛を鳴らしていた。
私は、医薬部門の業績が上がらない理由の一つとして考えられるのは、医薬部門の研究、開発、営業、学術等すべてが眼科用薬剤問題に集中し過ぎているのではないかと思われることです。(略)売上げ増加のため、眼科医諸先生に密着して、他を顧みる暇もない状態で、あたかも当社は眼科用剤専門会社のような状況なので、これでは眼科以外の情報は何も入らないと思います。眼科部門の業績拡大も結構ですが、(略)やはり、当社の業績拡大には薬剤分野を広げなければいけないのではないかと考えられます。(略)数年前私は、この問題について当社顧問の粕谷先生に相談したところ、先生も同感のようなので是非優秀な他分野の製品を開発できる研究者を推薦して頂きたいとお願いしましたところ、先生は、心がけましょうとのお話でしたが、当方の要請が難しいためか遂に実現しませんでした。この改革には研究及び開発の強化と努力が絶対に必要と思います。
「わかもと再建五十年の回顧」牧田鈆市氏(2002年3月14日)より引用
8割強の機関投資家が反対した五十嵐社長の取締役選任議案
資料4及び資料5のとおり、機関投資家は、五十嵐社長の選任議案について、業績・資本効率性や低い社外取締役の割合といった取締役会の構成などを問題視して反対票を投じました。
資本効率性についていえば、資料6のとおり、当社は本業とは関係のない不動産賃貸を行っており、その税引後時価利回りは1%前後と著しく低い水準です。このような低水準の利回りの賃貸等不動産を保有することは、資本コストの観点から合理的だとはいえません。
それだけではなく、当社の2021年度を初年度とする5か年の中期経営計画の最終年度における経常利益目標金額は10億円であり、税率30%及び賃貸等不動産の税引後含み益を考慮した2023年12月現在の修正自己資本約140億円を用いたROEの試算値は、5%程度と資本コストを下回る水準であると算定されます。弊社は、当社に対し、以下の取組を期待します。
84%もの機関投資家が五十嵐社長の選任に反対した状況は異常事態だと理解する
悪い業績、低い資本効率性、政策保有株式の保有及び低い独立社外取締役の割合という機関投資家の反対理由に向き合う。
賃貸等不動産を公正な価格で譲渡する
本業に必要ない資産(非営業用資産)を保有しない。資本コストの観点から賃貸等不動産の資本効率性は到底肯定できる水準ではない。
株主価値が向上する中期経営計画を策定する
現行の中期経営計画を達成しても株主価値は向上しない。資本コストの観点を踏まえ、更に機関投資家の反対理由を経営に活かした中期経営計画とするため、すみやかに見直しを行う。
資料4:五十嵐社長の選任に対する機関投資家の議決権行使結果
23年6月定時株主総会において19社のうち16社が社長の選任議案に反対票を投じた。
機関投資家名
賛否
反対理由
10
〃
独立社外取締役の構成が不適切であることから、候補者全員の選任に反対。3期連続で自己資本利益率が一定水準を下回っていることから、当該期間中継続して在任していた取締役の再任に反対。
(補足:円谷教授研究室ウェブサイトを参考に、各社ウェブサイトから弊社が作成。AMはアセットマネジメントの略。)
資料5:取締役一覧
社外取締役割合は3割未満。
1
代表取締役
五十嵐新
2
取締役
佐藤公彦
3
取締役
谷垣全彦
4
取締役
葛西洋芳
5
取締役
(監査等委員)
平田晴久
6
独立社外取締役
(監査等委員)
惠島克芳
7
独立社外取締役
(監査等委員)
桑原育朗
資料6:賃貸等不動産の税引後時価利回り
賃貸等不動産の時価は時価総額の半分に上る。
(補足:税引後時価利回りは、有価証券報告書注記に記載される賃貸損益×(1-想定税率30%)を賃貸等不動産時価の期中平均残高で除して算定。)
政策保有株式の保有にかかる気候変動リスク対応
資料7のとおり、政策保有株式に関する気候変動リスク対応の必要性への注目度は高まっています。そもそも、企業による政策保有株式の保有は政策保有株式の発行会社への出資と解されます。そのため、弊社は、政策保有株式の発行会社が直面している気候変動リスクは、例えば自社工場等が直面する気候変動リスクと同様に十分に認識されるべきだと考えます。そのため、企業は、政策保有株式の発行会社が有する気候変動リスクを、自社の気候変動リスクの一部として開示するべきだと考えます。
もっとも、弊社は、開示の有無にかかわらず、政策保有株式の保有に反対する立場です。政策保有株式を土台にした取引関係は健全な競争環境を阻害し、不正の温床にもなり得ることに加え、安定株主が増えることで経営の規律が緩むことなど問題は数多く指摘できます。
それにもかかわらず、資料8のとおり、当社は政策保有株式のうち8割弱を銀行への担保として供しています。政策保有株式を担保に供するということは、少なくとも担保分の政策保有株式については、売却する意志のないことが明確です。当社のこのような判断は、政策保有株式の縮減というコーポレートガバナンスコードの趣旨に逆行していると解さざるを得ません。弊社は、当社に対し、以下の取組を要望します。
政策保有株式をすみやかに売却する
ESGのSやGの観点のみならず、Eである気候変動リスク対応の観点等からも政策保有株式を保有するべきではない。そのためにも、すみやかに銀行への担保に供している政策保有株式を解消・売却する。
政策保有株式を保有する場合、政策保有株式にかかる温室効果ガスの排出量持分を開示する
有価証券報告書において、TCFDの「戦略」及び「指標と目標」に関連し、温室効果ガスの排出量持分及びその削減方針を記載する。
資料7:政策保有株式の気候変動リスクに関する見解
気候変動リスク対応の観点からも対応が求められる。
温暖化ガスがコストとして意識されるなか、座礁資産化の観点でリスクの高い政策保有株式を抱える企業にはより明確な説明を求めたい
(シュローダー・インベストメント・マネジメント 豊田一弘氏)
日本企業は政策保有分の気候変動リスクも開示する責任がある
(フィデリティ投信 井川智洋氏)
日本経済新聞朝刊2023年10月19日19面「政策保有株に環境リスク」より引用
(補足:井川氏の見解については、週刊金融財政事情 2024年1月30日号などもご参照。)
資料8:当社第128期有価証券報告書55頁の注記の抜粋
当社は実質無借金にもかかわらず、将来必要になるかわからない9億円の融資枠のために、政策保有株式残高24.83億円のうち76%に相当する18.99億円を銀行への担保に供している(2023年3月末現在)。
(貸借対照表関係)
※1.担保に供している投資有価証券
当事業年度より取引銀行1行と当座貸越契約 900,000千円の借入枠を締結し、担保設定をしております。なお、当事業年度末において、当座貸越契約による借入れは実行されておりません。
前事業年度(2022年3月31日) | 当事業年度(2023年3月31日) | |
投資有価証券 | 1,624,657 千円 | 1,898,817 千円 |
動物福祉に関する開示
製薬業界においては、世界的に3Rの原則(*)が遵守された上で動物実験が実施され、有効性と安全性のデータが確認されています。
*使用する動物数の削減(Reduction)、苦痛の軽減(Refinement)、代替法の利用(Replacement)
資料9及び10のとおり、3Rの原則の客観的な遵守状況について、グローバルの製薬会社は、例えば、動物実験に使用する動物数の削減(Reduction)に関して、動物別の実験動物購入頭数の数値データを公表しています。
この点、当社は、3Rの原則を遵守している旨のコメントや毎月の動物慰霊碑への参拝、一般財団法人日本医薬情報センターより厚生労働省による動物実験等に関する指針(2006年6月1日厚生労働省通知)の適合性に関する定期的な認定を受けていることを明らかにしています。
しかし、弊社は、3Rの原則の遵守状況を確認するためには上述のような定性的な情報のみではなく、定量的な情報の開示も有効だと考えます。そのため、弊社は当社に対し、以下の取組を要望します。
動物別の実験動物購入頭数を開示する
資料9:動物別の実験動物購入頭数等の開示例
グローバル製薬会社は、研究に必要な実験動物の購入頭数を開示している。
(Source: Bayer)
(Source: Novartis website, Rodents: 353,772, Zebrafish: 88,229 and Other: 432)
資料10:動物別の実験動物購入頭数(詳細に開示している事例)
Novo Nordiskは、詳細な動物別のデータを開示している。
(Source: Novo Nordisk)
メインバンク出身者が30%弱を占める取締役会
資料11及び12のとおり、当社の取締役会の30%弱は、メインバンクのみずほフィナンシャルグループ(以下「みずほFG」といいます。)の出身者が占めています。
みずほFGは当社株式の約3%を保有する大株主であるため、取締役を派遣すること自体に問題があるとは言えません。しかし、株式保有比率3%に過ぎない株主の出身者が、取締役会の30%弱を占める状態が続いているということは、大株主による取締役派遣の範疇を超えていると解されます。弊社としては、このような状態を踏まえると、メインバンクからの天下りという構図を想起せざるを得ません。弊社は当社に対し、以下の取組を要望します。
今後はメインバンクから取締役を受け入れない
当社の任意の指名報酬委員会の構成は、3名中2名がみずほFG出身者である。このような天下りが疑われかねない委員構成だからこそ、天下りを受け入れないという意思決定を行うべきである。
資料11:近年のみずほFG出身者のプロフィール
社内取締役は理事として入社後、取締役に就任する。
五十嵐新氏(現代表取締役社長)
81年 4月 (株)日本興業銀行(現 みずほFG)入行
05年 4月 (株)みずほコーポレート銀行営業第14部長
10年 5月 当社に入社(理事)
10年 7月 総務・広報部長
11年 4月 経営企画室長兼総務部長
11年 6月 取締役
12年 6月 常務取締役
19年 6月 専務取締役
22年 4月 代表取締役社長(現在)
惠島克芳氏(社外監査役からスライドし、現取締役)
77年 4月 (株)第一勧業銀行(現 みずほFG)入行
06年 3月 (株)みずほコーポレート銀行 常務執行役員
08年 4月 (株)みずほ銀行 常務執行役員
09年 6月 みずほインベスターズ証券(株) 取締役社長
13年 1月 みずほ証券(株) 取締役副社長兼副社長執行役員
14年 4月 みずほ証券(株) 常任顧問(2019年6月までは少なくとも就任)
16年 6月 当社社外監査役
17年 6月 当社独立社外取締役(監査等委員)(現在7年目)
菅又秀夫氏(元専務取締役)
71年 7月 (株)日本興業銀行(現 みずほFG)入行
96年 6月 同行 日比谷支店長
99年 2月 当社に入社(理事)
99年 6月 取締役
02年 6月 常務取締役
07年 6月 専務取締役
15年 6月 退任
(補足:当社有価証券報告書から弊社が作成。)
資料12:取締役会におけるみずほFG出身者割合
7年連続で取締役会の25%以上がみずほFG出身者となっている。
取締役数 | 割合 | 五 | 惠 | 菅 | |
23年6月 | 7名 | 28.6% | 〇 | 〇 | |
22年6月 | 7名 | 28.6% | 〇 | 〇 | |
21年6月 | 7名 | 28.6% | 〇 | 〇 | |
20年6月 | 7名 | 28.6% | 〇 | 〇 | |
19年6月 | 7名 | 28.6% | 〇 | 〇 | |
18年6月 | 8名 | 25% | 〇 | 〇 | |
17年6月 | 7名 | 28.6% | 〇 | 〇 | |
16年6月 | 13名 | 15.4% | 〇 | 〇 | |
15年6月 | 13名 | 7.7% | 〇 | ||
14年6月 | 11名 | 18.2% | 〇 | 〇 |
(補足:取締役数は、監査等委員会設置会社移行前にあっては取締役数及び監査役数の合計人数。)
元代表取締役会長兼社長(元取締役最高顧問)辞任の真相
資料13のとおり、当社の元代表取締役会長兼社長である神谷信行氏(以下「神谷氏」といいます。)は、2022年6月下旬に取締役最高顧問から最高顧問に就任することが予定されていましたが、同月中旬に突然辞任しました。
報道によれば、神谷氏は私的流用を行い、辞任したとのことです。
資料14のとおり、神谷氏は当社の代表取締役に10年以上も就任し、取締役最高顧問等にも就任していた人物です。そのような当社にとってかかわりの深い人物が突然辞任し、私的流用という報道があるにもかかわらず、「一身上の都合」という情報のみしか開示しないという当社の対応は株主として看過できません。弊社は、当社に対し、以下の取組を要望します。
調査報告書を開示し、問題の所在を明らかにする
調査報告書を開示した上で、第三者による調査をしていないのであれば、第三者委員会を設置してあらためて調査を行う。
責任の明確化を通じて市場の信頼を回復する
関係者全員に対して損害賠償請求を含めた処分をする。再発防止策を策定・実施する。
資料13:私的流用に関する開示及び報道
神谷氏の辞任理由は、当社によれば、一身上の都合とのこと。
(補足:当社ウェブサイト及び日刊薬業ウェブサイトから弊社が作成。)
資料14:神谷氏経歴
社長、会長、最高顧問を歴任。
68年4月 興和新薬(株)入社
04年6月 興和(株)取締役
06年4月 興和新薬(株)取締役
07年7月 興和(株)常務取締役
10年1月 当社に入社(理事)
10年6月 代表取締役副会長
11年4月 代表取締役社長
16年6月 代表取締役会長兼社長
17年4月 代表取締役会長
21年4月 取締役会長
21年6月 取締役最高顧問
22年6月 辞任
(補足:当社有価証券報告書から弊社が作成。)
積み上がったまま放置される別途積立金
資料15のとおり、当社取締役会は過去15期のうち7期で無配とする決定をしました。しかし、当社の貸借対照表には39.53億円に上る別途積立金が計上されています。別途積立金は、繰越利益剰余金に振り替えることで、配当の原資とすることができます。なお、別途積立金の39.53億円を自己株式を控除した発行済株式総数0.347億株で除すると114円となります。
資料16のとおり、当社の貸借対照表に基づき算定される、賃貸等不動産及び政策保有株式(■)の売却・譲渡時の金額から想定支払い税金(■)を控除した売却手取金額(■)に、現金(■)を加算、有利子負債(■)を控除した金額(資料16において「ネット現金同等物(■)」といいます。)は多額に上ります。弊社は、非営業用資産の売却手取金及び運転資金を上回る余剰現金を、投資や株主還元に活かすことが当社の株主価値向上のために望ましいと考えます。
そもそも、株主還元について、ある決算期の利益の範囲内でしか配当を行うことができないというルールはありません。業績のブレがあったとしても株主への一定水準のリターンを保障するという観点からは、株主資本コストに相当するDOEを株主還元方針とすることが有効です。さらに、当社は76.7%という高水準の自己資本比率であるため、このような資本政策を通じて、自己資本の水準を最適化することにも期待できます。そのため、弊社は当社に対し、以下の取組を要望します。
別途積立金を全額取り崩す
DOE9%を株主還元方針とする
株主資本コスト以上のDOEを設定すれば、株主は安定的で魅力的な株主還元に期待でき、当社に投資するリスクの低減につながる。なお、弊社は当社の株主資本コストを9%程度と算定している*。
*資料1の数値及びエクィティスプレッドの考え方に基づくと、当社の株主資本コストは、利益成長率をゼロとする場合、ROE÷PBRで算定される。当社の2021年度を初年度とする5か年の中期経営計画の最終年度の経常利益目標10億円から想定税率30%を控除して算定される当期純利益を、賃貸等不動産の税引後含み益を考慮した修正自己資本140億円にて除して推定されるROEは約5%であり、修正PBRは0.55倍であるため、株主資本コストは約9%と算定される。
資料15:過去15年間の一株配当
15期の決算期のうち7期で無配となっている。
資料16:当社のネット現金同等物の状況
時価総額77億円に対し、非営業用資産売却手取金は50億円にも上る。
わかもと製薬取引先持株会の存在
当社の大株主第3位は、わかもと製薬取引先持株会です。しかし、取引先持株会の存在は、政策保有株式の縮減を促すコーポレートガバナンスコードの趣旨に逆行しています。というのも、取引先持株会を設置している上場企業の株式は、政策保有株式として定期的に買増しされるからです。
資料17のとおり、取引先持株会に加入している上場企業は、有価証券報告書において当社株式の保有目的の欄に「取引先持株会を通じた株式の取得」と記載しています。
日本証券業協会が定める持株制度に関するガイドラインは、取引先持株会の目的を「取引関係者による取得対象株式の取得により、相互間の親睦関係の増進に寄与すること」と定めていますが、実質的な目的は安定株主の確保であることは否定できません。現に、大手証券会社が販売している書籍によると、取引先持株会を設置するメリットとして、取引先持株会が安定株主として期待できると解説されています。弊社は当社に対し、以下の取組を期待します。
取引先持株会を解散する。または、取引先持株会の取りまとめをする理事長会社に解散を要請する
資料17:当社取引先持株会の会員会社の有価証券報告書記載例
安定株主が増えると当社の経営の規律が緩むことに繋がる。
当社の企業価値の源泉である取引先と強固かつ長期的な信頼関係を構築することを目的として保有しております。医薬品パッケージ・添付文書・ラベル等のお取引のほか、包装機械等のお取引があります。当該株式の保有効果といたしましては、継続的な取引が実施されたことに加え、株式保有の経済合理性も担保されております。また、持株会を通じた取得に伴い株式数が増加しております。
出所:朝日印刷株式会社第107期有価証券報告書55頁【株式の保有状況】の当社株式の保有目的
株式会社の目的と上場要否の再検討の必要性
株式会社の取締役の責務は、自身を選任する権利を持つ株主に対して、株価の値上がり益と配当で報いることです。当社取締役におかれては、株主価値の向上という視点で、経営に臨んでいただくことに期待します。また、それが困難な場合、非上場化することも選択肢のひとつです。
非上場化は取締役にとって恥ずかしいことではありません。しかしながら、非上場化を検討するにしても、株主の利益を追求しなくて良いわけではありません。非上場化に進む前に、賃貸等不動産の含み益を十分に反映した修正PBR1倍以上の水準の株主価値を達成していただきたいと存じます。
なお、株主価値向上のための経営方針の推進や、株主価値の改善に取り組んだ上での非上場化の検討が難しい場合は、株主価値向上を推進できる取締役を招聘し、当社取締役におかれてはすみやかに辞任していただきたいと存じます。
資料18:神谷氏辞任後(2022年6月17日以降)の当社の株主総利回り(トータルシェアホルダーリターン)
株価は絶対値でも対指数でも大きくアンダーパフォームしている。
(補足:株主総利回りとは、配当落ちの影響を控除した株価の指標です。なお、配当込みTOPIXは税引後のベースであり、当社の配当も同様に税引後に再計算して比較しています。)
株主価値向上に向けた経営方針を採用していただけないのなら、非上場化して株式市場から撤退する
非上場化しないのなら、取締役を辞任し、株主価値向上のための経営を行っていただける取締役と交代する
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